ボルトが折れた・・・
(例題1:下の図のボルトを外すには、どのような対策が適当か?)
まず、このボルトが締め込み時で折れたか、緩め時で折れたかで対処法が変わる。
● 締め込み時に折れた場合 ●
(1)ネジ山が多少出ている
その場合、潤滑スプレーを吹きプライヤーなどで掴み回してみる。
締め込み時の折れであれば潤滑材の浸透により摩擦抵抗が落ち、抜けてくる。
(2)ネジ山がフレームと丁度の高さで折れている。
ボルト折れの場合、ネジ折れ部分のどちらか片側が高くなっているはずなので、潤滑材を吹きポンチとハンマーで反時計回りに少しずつ叩きながら回してみる。
ゆっくり回るようなら、時間をかけて回していく。
小さなボルトの場合は、折れたネジの頭にマイナスドライバーが入る溝をつけ回してみる。
(3)ボルトがネジの途中で折れている。
小さいボルトの場合は、精密ドライバーのマイナスを入れてみて、回せるか確かめる。 回るなら、そのままゆっくり回して緩めていく。
大きなボルトの場合は、「逆タップ」を使うしかない。(先端がテーパになった工具)
「逆タップ」とは、通常ネジを切るタップが時計回りで回すのに対し、反時計回りで回すタップである。
ポンチをセンターに打ち、逆タップの全長の1/4が入るまで穴を開けるが、当然、逆タップの径よりも小さい寸法で開ける。
(スチールの場合は有効だがステンレスボルトは専用ドリルが必要)
● 緩め時に折れた場合 ●
この場合は、正直厄介です。その時の状況により適切な対応をしないと後々で泣きを見ます。
(1)ネジ山が多少出ている。
締め込み時と同じ要領だが、ネジ部がサビている場合や潰れている場合があるので、とにかく潤滑スプレーを吹き、そのまま10分以上、放置しておく。
ネジ部から赤茶色の潤滑材が浮かんできた場合は、更に何回かスプレーを吹き錆の中に潤滑材を浸透させる。
ネジが錆びていない場合は最悪である。スパナ掛けを作る為にネジに二面幅を作る。
それが出来ない場合は、逆タップを使う。それでも抜けない場合は、ボルト先端にバー材を溶接して抜くという荒業をするしかない。
(2)ネジ山がフレームと丁度の高さで折れている
この場合も逆タップにて抜くのが最良。ポンチやハンマーで打ち勝てる相手ではない。(返って座面を潰してしまう)
(3)ボルトがネジの途中で折れている。
本来ならお手上げ状態である。素人では手が出ないはず。プロはその状態でも逆タップを使う。
● どうやっても抜けない場合 ●
どんな技を使っても抜けなくなっている場合は、一回り大きいドリル刃でボルトをネジ山ごと貫通させ、新たにタップでネジ山を作り
ボルトを通すしかない。 しかしこの場合は相手側のネジを立てる部分に肉厚があるかどうかが問題になる。
鉄板にナットが溶接してある場合は、サンダーでナットを飛ばし、新たにナットをCo2溶接機にてスポット溶接をする。
対象物に肉厚が無い場合は、強度的に問題がなければヘリサートを打ち込む方法もある。
アルミ材や銅材など、柔らかい物は最初からヘリサートを使う。
(ヘリサートとはニッケル材で螺旋状のネジを立て直す工具)